地上の試し5
それは俺と共にあった。
俺を産んだ女の知己から聞いた話によると、
なんでも産まれたときには、
すでにそれを装着していたという。
俺を産んだ女は気味悪がって
産まれたばかりの俺からそれをはずし、捨てようとしたが、
それをはずすと俺が烈火のごとく泣き出して
収拾がつかないため、
捨てられなかったとぼやいていたらしい。
それは不思議なことに俺の手の成長とともに、
その大きさを変えていった。
それは常に俺の手に丁度いいサイズになるのだ。
奇妙なことに。
捨ててみたこともあったが、
なぜかはわからないが、誰か、こうるさい人物に怒られる気がして
戻って拾い、今も俺の左手にある。
それを捨てたからと言って、
怒る人物など誰一人居ないはずなのに。
その為、風呂や洗顔など手を濡らすとき以外は、
つねに身に着けているようになった。
おかげでそれを身に着けていないと
落ち着かないようになってしまった。
あれは、12歳の頃だったか、
俺を世話させてやっている家に強盗が押し入った。
刃物を持った数人の男達に向かい、
その家の家主のおじさんは、果敢に立ち向かったが
怪我をするのが関の山。
仕様がないので俺も応戦した。
強盗はたいして強くはなかったのだが、
立ち回るうちに、相手の刃物が足に刺さり
途端に分が悪くなった。
やられると思ったその時だった。
俺は、それらの使い方が突然わかったのだ。
・・・・いや、あの感覚は、
「わかった」と言うより「思い出した」と言うほうが近い感覚だった。
そんなもの、誰かから教わっているはずもないのに。
俺は、それを掲げ、それを使う為の口上を述べた。
次の瞬間にはそれから発生した風の渦が
家を半壊させていた。
その後怪我の回復を待ってから、
何故かその家を追い出され、
いろいろな場所を転々とすることとなった。
で現在、この左手のそれの力を知った、どこぞの金持ちのおっさんに、
未発達の尻を持つお嬢様の旅の付き添いを頼まれて
旅をしているのだが・・・・。
そんな訳で、この左手のそれ
・・・・「風」という文字の書かれた黒い皮手袋が一体なんなのか、
未だにわからないが、
有効利用していたりする。
この皮手袋は、
俺の左手の持つあの痣とかとも関係があるのかもと思わなくもないが、
その皮手袋を使う分には疲れることも無いので、
深く考えないことにした。
とにかく、今日もお嬢様のお守りをしつつ、未発達な尻を触ろうかと思う。