地上の試し 2

「おうおう、怪我したくなかったら有り金全部だしな。
 嬢ちゃんがた」

黒くて筋骨隆々で、ぼろぼろの服を着、斧を手にした
いかにも山賊ですといわんばかりの大男が
どこかで聞いたような常套句を口にして旅人を引き止めた。
先日とは違う人物のようだが。

引き止められたのは、
先日と同じ少女と、天蛇と呼ばれる青年の二人組み。

「あはははは。どこかで聞いたような気がする台詞ね・・・」

あきれたような顔をして少女はそう言った。
横に居る青年、天蛇はその少女の顔を見て、
わざとらしくため息をついてから、
哀れみを含んだ表情をしながら言った。

「2日と1時間と14分前に、
 ここから北東に約
42キロのところにある山道で、
 全く同じ台詞を聞いたのを、
 もうお忘れですか?お嬢様?

脳みそ大丈夫ですか?
 そんな最近のことすら覚えてないなんて?お嬢様?」


そう言う天蛇に向かい少女は大声を張り上げて反論した。

「覚えているわよ!!
 いやみもわからんのか!あんたは!!!!
 それに、そんな細かく言わなくたっていいじゃない!!」

「おや。
 いやみなどを言えるほど高等な脳みそ持っていられるとは思わなかったもので、
 お忘れになったのかと思い、
 親切にも詳細にお教えしただけじゃないですか。お嬢様。」

天蛇の台詞から、いつのまにか口げんかになっていた二人に
呆然としていた山賊は、われに帰って、二人の会話に割り込んだ。

「痴話げんかなら後でやりな!!
 ほら痛い目見たくなかったら有り金出しやがれ!!」

「痴話げんかなんかじゃない!!」

叫んで繰り出した少女の回し蹴りに、山賊はあっさり倒されたのだった。

天蛇は、そんな少女の後ろに行き、またもや尻を撫で回しながら呟いた。

「全くだ。痴話げんかだなんて、
 こんな未発達の尻を持つお嬢様と恋人同士だなんて思われては、
 畏れ多いと言わざるを得ないじゃないか・・・。」

少女は顔を真っ赤にしながらコブシを震わせ怒鳴った。

「そう思うのなら、触るなーーーーー!!」

叫びながら振り向きざまに
天蛇を殴ろうかとコブシを振りかぶったが、
天蛇はとっくに手の届かないところまで逃げていた。

「俺、逃げ足だけは速いって評判なのですよ。
 お嬢様が危ない目にあっても、俺一人で逃げ切れる自信あるので、
 俺の心配は無用ですよ。お嬢様。」

「あんたの心配なんかする訳ないでしょが!!」

「鬼ですか。あなたは。お嬢様。」

「どっちがよ!!」

こんな会話をしながら二人は、
この場から早足で遠ざかって行った。

残されたのは、少女にけり倒された山賊の情けない姿だけだった。



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