地上の試し 1
「おうおう、怪我したくなかったら有り金全部だしな。嬢ちゃんがた」
黒くて筋骨隆々で、ぼろぼろの服を着、斧を手にした
いかにも山賊ですといわんばかりの大男が
またこれでもかといわんばかりの常套句を口にして
旅人を引き止めた。
引き止められた人物は、質素で動きやすそうな外見ではあるが
上等な布を使った着物に身を包んだ十四五歳くらいの可愛らしい少女と
黒い着物に身を包んだひょろりと背の高い細身の目つきの悪い
二十歳くらいの青年の二人連れである。
少女は鼻で軽く笑って、顔に似合わずやや豊満な胸を反らせて、
「いったい誰に向かって言っているのか、わかっているのかしら?」
そう言い、ちらりと斜め後ろに立っている青年を見た。
つられて山賊もそちらを見やる。
「へっ・・・。その優男が用心棒って訳か?でも強そうには見えねぇんだが?」
少女はまた山賊に向き直り、手を青年のほうに掲げて高らかに叫んだ。
「さあ!!やっておしまい!!天蛇!!」
その言葉に、山賊は手に携えていた斧を構えなおして息を飲んだ。
一瞬の沈黙。
青年がゆっくりと横に移動し、
ゆっくりと・・・・・・地面に腰を降ろした。
そして懐から一冊の本を出して、おもむろに読み出し一言。
「お嬢様。俺忙しいのでぇ〜。・・・・自分でどうにかしてください。」
再び辺りを沈黙が包んだ。
「なんじゃそりゃーーーーーーーーーー!!!!!」
沈黙を破ったのは少女の叫び声だった。
「あんた!わたしの旅の護衛に、お父様に雇われたって事忘れたの!?」
興奮して叫ぶ少女の顔を面倒くさそうに見やってから、
天蛇と呼ばれた青年は立ち上がった。
そして、少女のすぐ横まで来てから、手を少女の尻に当てて撫で回した。
「うきゃあああああぁぁぁぁ!!!」
赤くなって叫ぶ少女に向かい天蛇は、
さらに撫で回しながら言った。
「こういうことする、助兵衛な悪い虫から守るために、
雇われたんじゃないの?
俺弱いし、用心棒だなんて思われたらたまらんなぁ・・・。」
「お前が触るなーーーーー!!!!」
少女の怒声がこだました。
数分後、実は空手の有段者のその少女は自力で山賊を倒したのだった・・・・。