地上の試し14

「ここが、お父様の親友の家よ」

長い髪をきっちりまとめた可愛らしい小柄な少女詩緒は、
そのあたりでは一番大きな店である薬問屋を見上げ、
隣に立っている人物にそう言った。

それに対して、
隣に立っている人物・・・ボサボサ頭の長身の青年天蛇は
こう答えた

「これだけ御立派な建物を建てるには相当あくどいことを・・・
  さすが、お嬢様をお育てした方のお友達ですね。・・・類は友を」

「いや、全然あくどくないから。おじさま凄く良い人だから」

と、天蛇が言い終わる前に詩緒は即座に突っ込みをいれた。

実際、店主の人柄で客がついて大きくなった店で、
このあたりでは高い評判の店である。

「お父様に包みを渡して来るように言われているのはここよ」

そう言って詩緒は裏口の自宅の方に挨拶をしながら入って行き、
天蛇もそれに続いた。


「詩緒ちゃんよく来たね!まぁ大きくなって・・・
 上がってゆっくりして行きなさい」

中に入ると、多少ふくよかで人が良さそうな顔をした中年女性が
二人を出迎えた。

どうやら詩緒の父親の友達の奥さんらしく、
その女性は自宅とつながっている店舗から店主を呼び
台所へと姿をけした。

「久しぶりだね〜詩緒ちゃん。大きくなって!
 ささ、今お茶を出すから座ってくれ。

  
  ご一緒の方もどうぞゆっくりしていってくださいな」


出てきた店主・・・詩緒の父親の友人の案内で
居間へ移動した。


案内されている途中で天蛇が
「たいへん小柄なお嬢様。
 大きくお育ちになられたようで、ほんと良かったですね」
と、しみじみとつぶやいたけど詩緒は聞こえなかった事にした。


居間で座布団に座り、お茶を出されてから
詩緒は天蛇の事を
「お父様が雇って、一緒に旅してきた人」
と説明及び紹介してから、
店主に包みを渡した。



店主はすぐにそれを開け
そこに入れられていた手紙を読むと、
ふむふむと頷いたあと、

さきほどの奥さんらしき女性に耳打ちをしてから話した


「旅をしてきて疲れただろうから、
 今日はうちに泊まってゆっくりして行くと良い。

 
 今、家内に布団の用意をさせるから」


と店主に言われ、詩緒は迷ったが、
せっかくの好意を無下にしてはいけないと思い

「お言葉に甘えさせていただくことにします」

と答えた。




そして詩緒と天蛇の二人は夕飯を御馳走になってから
お風呂を借りることになった。



先に詩緒がお風呂を借りる事になり、
店主と天蛇の二人が居間に残った。


天蛇は詩緒の姿が見えなくなったのを確認すると、
立ち上がると同時によろめいた。

「大丈夫か君!?」

と、店主が心配して声をかけ手を出すと、
天蛇は手を貸してくれなくても大丈夫と手で制し、
つらそうに息を吐いてから言った

「お嬢様には心配おかけしたくないので黙っていてください・・・
 

 山賊に襲われ、
 お嬢様をかばったときに怪我をしたなどと知れては、
 
 心やさしいお嬢様の事ですから、
 気に病まれてしまいますので・・・」



店主は足を抑える天蛇に対して感心してから
店の方を指さし



「そういうことなら詩緒ちゃんには内緒にしておこう・・・。
 だが、少しでもよくなるように、
 うちにある傷薬を使いなさい」



と声をかけた。

それに対して天蛇は心底申し訳なさそうな表情で



「・・・お言葉はありがたいのですが、
 お金を払おうにも、
 途中でお嬢様が熱を出された時に買った薬が高くて
 今持ち合わせが・・・

  
  ・・・あ!!お嬢様にはこんな事言わないでください!
 
 お嬢様も限られた路銀で私によくして下さっているのに、
 これ以上お金を使わせたくないのです・・・!」



そう言って、うなだれてしまった天蛇の肩に手を乗せ、店主は


「なんて優しい青年なんだ・・・お金の事は気にしなくて良い。」

と声をかけてから、店主は店の方へ行き、

数分後には手に傷薬や熱さまし痛み止めなど
色々な種類の高価な薬を持って戻ってきた。



「これだけあれば薬に困る事もないだろう。持って行きなさい」


「そんな、こんなに・・・・!!申し訳ないです受け取れません!」


と遠慮する天蛇に、
店主は無理矢理薬を押し付けた



「その代わり、詩緒ちゃんの事はよろしく頼んだよ。

 おじさんは詩緒ちゃんの事が自分の娘のように可愛いんだ。
 
 だから、詩緒ちゃんと共に旅する君も
 元気で居てくれないと困るのだよ。

 おじさんの為だと思って受け取ってくれないか?」



そう天蛇の目を見据えて真剣に話す店主に対して、
天蛇は困ったような表情をしたのちに、

うつむきながら振り絞るような声で答えた



「ありがとうございます・・・!この御恩は決して忘れません」





数分後

店主が居間から出て用を足しに行っている間に御風呂からあがってきた詩緒は、
天蛇の横に見慣れぬ革袋が置いてあるのを見て
怪訝な顔をして天蛇を見詰めた。



そんな詩緒の表情に気付いているのか居ないのか、
いつもの態度に戻った天蛇は、
詩緒に質問をした

「お嬢様。この辺で、買い取り屋やっているような人、知りませんかね?」

「んまぁ知らなくもないけど?って、買い取り屋さがして何を売るのよ?」

「まぁちょっと、私物を売るだけですので気にしないでください。
 ・・・しかし今日は日課が出来ないのが残念でなりませんね」


「日課って何よ?」


詩緒に叫ばれると、
さきほどの演技が無駄になると思った天蛇が、
今日はまだ詩緒のお尻を触ってないという事に


詩緒が気付くことは無かった。



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